昼間の読み物

だから、選んだのは”東大卒・元アイドル”橋本ゆき。【28才女子、はじめての投票に行く】

「選挙の日ってうちじゃなぜか投票行って外食するんだ」

これ、ファンタジーの話だと思ってました。

わたしの育った家は、おそらく”貧困世帯”。
いつも余裕なくキリキリとして見える両親は、選挙の時期が近づくと「投票なんて時間の無駄だから行ったことないよ。国なんて、私たちになにもしてくれないじゃない」といつも自慢げに口にしていました。

いま思えばそれは、「自分たちはこんなにがんばってる」と言い聞かせたかったのかもしれません。でもおかげでわたしは、つい最近まで”選挙は自分には関係ない富裕層のためのもの”だと思い込んでいたのです。

しかし最近、とある近所のバーでなんとなく選挙の話になったときに、マスターにこんなことを言われました。

「選挙は参加するってことに意味があるんだよ。だれも選べるような人がいないなら、無記名投票で意思表明しなきゃ。」

「自分が無力だって痛感したから、自分にしかできないことがあるって気づいたんです」

なるほど、社会に参加するために「だれも選ばない」という意思表明をするのか。
だけど、ワーワーとうるさい街頭演説や選挙カーは見かけても、肝心の”投票”っていつどこでやってるの?

せわしなく過ごす日々のなかで、ちいさな疑問はあっという間に頭の片隅に追いやられていました。

そんなある日、夜もおそくに最寄駅に帰ってくると、黄色のコートに身をつつんだ女の子に声をかけられたのです。

それが、渋谷区議員候補の橋本ゆきさんとの出逢いでした。

びっくりしたのは、彼女がまるでティッシュ配りかのようなナチュラルさで路上にまぎれこんでいたから。
聞けば、毎日朝から晩までこうやって、挨拶をしたり、握手をしたりして町のひとに知ってもらっているのだそう。

気になって「どうして議員になりたいと思ったんですか?」とさらに質問してみると、「自分が無力だって、痛感して」と話しはじめてくれました。

「実は先月まで、仮面女子ってアイドルグループでアイドルの”桜雪”として活動してたんです。

活動中、不慮の事故で車椅子の生活になってしまったメンバーがいて。そのときに、”どうしようもないのかな、なにもできないのかな。なんて自分は無力なんだろう”って思い知って。

でも、そんな仲間のがんばる姿を見て、自分にしかできないことがあるはずって励まされたんです。小さなことからすこしずつかも知れないけど、誰かのことを守ったり、明るい未来をつくるために社会の仕組みを変えていくなら、まず動かなきゃって」

正直に打ちあけると、最初に橋本さんが目に入ったときは「かわいい”女の子”が立ってるな」という印象でした。
だけど、持ち前の賢さでしっかりと自分の意志を持って話すその姿には”女性としての力強さ”がありました。

26歳と、わたしとそうそう変わらない年齢の子が、しかも女の子が、政治家になろうと思ったりもするんだ。

だったらわたしも、社会の一員として政治のことを考えてみても、きっといいはず。

1 2 3
ABOUT ME
さとうひより/ロジエ編集長
さとうひより/ロジエ編集長
「女の子だから」とジェンダー的不平等や性の搾取にけっして遭うことなく、「女の子だから」と自覚的に楽しめる社会をつくる野望を叶えるため、インターネットでの読み物サイト「ロジエ」を立ち上げました。      ▶︎​このライターの記事をもっと読む!