そんなときは、絵が代わりに泣いてくれる
そう口にする彼女は、けっしてそれを面白がっている雰囲気ではない。むしろ、話しながら自分でも「そうだったのかも」と発見しているように見えて、なんだかその間合いがとても心地よかった。
ーもしかしたら、そういったおごらないスタンスが共感を産んでるのかもしれないですよね。SNSって基本的に、「見て!」ってアピールするためにもあるじゃないですか。
だるだるがーるさんの絵には、そんななかで、ふと足をとめるみたいに「そうだよなあ」と思ってしまうような魅力があるような気がします。
そういうご自分の創作のモトにもなる感受性って、どういうところにあると思われますか?
だるだるがーる:うーん、モチーフでいうと、昔から淡い青とか、青緑みたいな寒色系の色が好きなんですよ。エメラルドグリーンとか。
緑とか青って見ててこう…惹かれるんですよね。自然の色だからかもしれません。そういう理由があって好きなんじゃないかなって思うんだけど…。
(この日のシャツと時計も淡い青。)
ー樹木とか、空とか?あっ、お水もそうですよね!海とか。
だるだるがーる:たしかに!私、ジブリもすごく好きなんですよ。特に「魔女の宅急便」は海辺の街が舞台なので…ああいう雰囲気が好きですね。
「下灘駅」ってご存知ですか?愛媛県にあるんですけど、初めて写真でその景色を見たときに、「こういう青を描きたい!」って思ったんです。
だるだるがーる:あと、ぜんぶがぜんぶじゃないんですけど…。人の声とか文字にイメージが浮かぶことがあるんです。
栃木にいる祖母の声を思い出すと、淡いのに深みがある不思議な感じがして…。
ーなるほど!共感覚があるんですね。
だるだるがーる:共感覚?
ー色や音に温度を感じたり、音が色に見えたりする性質のことです。音楽関係のかたにも多いみたいですよ!
ちなみに…わたしの声はどうでしょう?
だるだるがーる:ピンクとかオレンジみたいな元気な感じがします!あっ、うるさいとかそんなんじゃなくて…(笑)
ーさいごに、ちょっと気になっていた質問を。現役医大生とのことですが、卒業後はどういった進路を考えているんですか?
だるだるがーる:医者になりたいのはもちろんなんですけど、医療系のイラストも描いていきたいし…やっぱり絵も続けていきたいです。
あるきっかけがあって、脳外科のDr.まあやさんというかたと知り合ったんですけど、すごく面白いんですよ。医師でありながら、デザイナーをしたり、本も出したりして。
そんな生き方を見て、すてきだなあって。
ーたしかに今は二足のわらじを履くパラレルワーカーが活躍する時代ですもんね。あと、お医者さんって変わった人も多い気がします(笑)
テレビでタレントになるようなお医者さんがいるなら、イラストレーター兼お医者さんもぜんぜんアリだと思います!
だるだるがーる:イラストも、医者も、”手に職”なので。今はひとまずいろんなことに挑戦してみたいです。
(「このお店、ジブリの絵がたくさん飾ってありました!」とうれしそうに教えてくれました。)
「浪人してた時から、あー、だるいなあ〜って思ってたんです。あと”だる”と”がーる”で韻を踏みたくて」
ペンネームの由来はなんですか?と聞くと、「とにかくだるくって…」と真剣に答えてくれる様子がかわいらしい。
それと、もうひとつ。英語表記の「dull」には「和らげる」という意味もあるんだそうです。
どう考えてもその思考はアーティスト気質なのに、それをすこしも鼻にかけないだるだるがーるさん。そんな彼女の「むきだしにできない」感情が秘められているからこそ、
その絵はわたしたちが普段こっそり隠し持っている心の気だるさをくすぐるのかもしれません。
shooting location:喫茶店 セブン(SEVEN)
東京都世田谷区三軒茶屋1-32-13
東急田園都市線三軒茶屋駅南B出口より徒歩2分
Wi-Fiや電源こそありませんが、所狭しと並ぶジブリやスヌーピーのモチーフのインテリアにわくわくすること間違いなし♪
イラストレーター・だるだるがーるによる
月刊連載がスタートします!
4月のテーマは「新生活」。